私たちコバヤシ工業の建築は、図面上の数字や部材の強度だけでなく、地域に根差した歴史と、人と人との「縁」によって成り立っています。30年の時を超えた、ひとつの「縁」があります。
30年前に蒔かれた、未来への布石
現在、営業部のAさんは、建設業界未経験で入社しましたが、お客様の思いを汲み取る力に長け、日々成長を続けています。ある日、設計部長であるWさんが、Aさんの実家が過去に自身の設計事務所時代に携わった物件であることを知りました。Wさんが30年前に建築確認申請を行ったその建物は、今もAさんのご家族の暮らしを支え続けています。一人の設計者が、30年の時を経て、その建物に暮らした次世代の人間と、会社の同僚として「縁」を結ぶ。この事実こそが、私たちが日々、一枚の図面にどれだけの責任を込めているかを如実に示す出来事でした。

33年前に書かれた実際の図面

基礎工事は土木経験の豊富なAさんの祖父がされた

約22年前のリフォーム工事をした際の申請も後藤建築設計事務所で対応した
「納まり」のその先にある、師の哲学
Wさんの設計に対する思考は、単なる機能やコスト計算にとどまりません。それは、厳しい自然環境に耐えうる「納まり」の技術を追求し、それを通じてお客様の理想を最大限に実現するという、深い思考です。
Wさんは言います。「今から13年前に閉じた元所長の設計事務所で、私が所長と共に描いた数多くの図面。その線の引き方、意匠の哲学は、図面を見れば今でも所長の影を感じるものです。」
前所長は、Wさんに単なる製図技術ではなく、建築を通じて地域と人々に貢献する意匠と経験を伝えました。そして今、Wさんの頭の中にあるのは、所長への「恩返し」の具体的な方法です。それは感傷的な「思う」ことではなく、自分が体得した全ての経験を、Aさんのような次世代の社員に体系的に伝えること、すなわち継承という名の行動です。

W設計部長の意匠を営業部のAさんが製図/制作したPLAN。コバヤシ工業の意匠は構造を問わない。
生成AIを組み合わせることで、より高い意匠表現の実現に向けて思考錯誤を続けている。